

―先代ジャイアン・たてかべ和也さんからアドバイスはありましたか?
ジャイアン役に受かったものの、不安でいっぱいで、たてかべさんにジャイアンを演じるコツを聞きました。超野暮ですけど。
そしたら「ジャイアンは豪快なやつだから思いっきりやってくれ!!」と一言。
後にも先にも直接いただいたアドバイスはそれだけ。ヒント少なすぎますよ(笑)。どうにかして意図をくみ取ろうと、あれこれ考えましたが、まったくピンときませんでした。
それから少し経ち、声優交代直前の特番で、たてかべさんが「ぼくはジャイアンを通して、たくさんの“勇気”と“元気”と“人気”をもらった」とおっしゃっているのをみました。「勇気」と「元気」はなんとなくわかるけど、
「人気」というのは? なるほど……、少し糸口が見えた気がしました。

120P「ドラえもんに休日を!!」)より
数年後、ぼくが通った高校が偶然たてかべさんのご自宅の近所だったこともあり、文化祭に遊びに来てくださったんです。「友だちに教えたら喜びますよ」と提案したら、
「みんなには黙っておいてくれ。ジャイアンは昴のものだから」というんですよ。
そして文化祭当日、たてかべさんは、ぼくが出演した演劇を観終えたら、すぐに消えてしまいました。粋だなあと感心していたら……、じつは体育館で大勢の生徒に囲まれてジャイアンリサイタルを開催していました!(笑)
友だちからは「昴すごいぞ! 本物のジャイアンだぞ!」なんていわれるし……。こっちも偽物ではないわ!(笑)

「キャンデーなめて歌手になろう」)
より
「おれがジャイアンだ! おまえら母ちゃんのいうこと聞いてるか?」、そして「昴をよろしくな!」ですよ(笑)。だけど、そのとき、たてかべさんのいう「人気」というのがわかった気がしました。豪快で、みんなに大人気のジャイアンそのもののたてかべさん。
その姿が、いまでもジャイアンを演じるうえでのガイドラインになっています。
それから、たてかべさんは平日でも、ふら~っと学食に来て定食を食べていましたけどね(笑)。
ぼくは人生の経験が浅い分、たてかべさんの生き様をまだ表現できていませんが、ゆくゆくは、たてかべさんのように豪快でカッコイイおじいちゃんになりたいです!

―あらためて、木村さんにとってのベスト・ドラえもんソングは?
やっぱり『おれはジャイアンさまだ!』です。ジャイアンの代名詞というか、ジャイアンを表現するうえで欠かせないスピリッツが一番込められている楽曲ですからね。 いつか歌わせていただくのが大きな夢です。たてかべさんが書かれた歌詞なので、意志を引き継いだ気持ちになれると思いますし。あらたまって歌詞を読むと、ジャイアンの豪快さと自信がみなぎっていますよね。さすが、たてかべさん!

一方ぼくは、劇中のリサイタルではアドリブの歌詞で歌ったことがありますが、CDに収録されるような楽曲として作詞したことはありません。だから、次の野望は自分で作詞したジャイアン・ソングです。
じつはずっと前から、ジャイアンにラップをさせたいと考えていました。来年のジャイアン誕生日はラッパー・ジャイアンになるかもしれませんね(笑)。
さっき、ぼくのジャイアンは第2期と第3期に分かれているという話をしましたが、次はさらに進化した“大人期(だいにんき)”をめざします!!(笑)
―木村昴さん、素敵なインタビューありがとうございました!
木村 昴(きむら・すばる) 1990年6月29日、ドイツ生まれ。声優・役者・歌手。'02年にミュージカル「アニー」でデビュー。'05年、14歳でテレビアニメ『ドラえもん』のジャイアン役に抜擢。 個性的な声優として活動する一方で、'09年に「天才劇団バカバッカ」を旗揚げし、舞台役者としても活躍。 また音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク」の中心人物としての歌手活動も精力的に展開中。

