8月18日(金)放送のパワーアップ第三弾は「がんばれ!おばけハウス」と「ロビンソンクルーソーセット」。
どんなおはなしにも必要不可欠な登場人物たち。今回は八鍬監督が、藤子・F・不二雄先生のキャラクターをアニメとして描くときに、心がけていることを語っていただきました。
——キャラクターに対しては、どんなこだわりがありますか?
大杉 F先生のキャラクターって、ギリギリまで簡略化されたキャラクターでしょう。なかでも主人公の少年、のび太にまったく特徴がないというのは、アニメ作品としては究極なんです。
八鍬 特徴的な髪型や、衣装、小道具とか必ず主人公には、何か特徴がありますものね。のび太の場合、めがねくらい(笑)
大杉 スネオヘアーっていわれるくらい、スネ夫のキャラが立って見えるのは、それだけほかのキャラクターに特徴がないということだから(笑)。
八鍬 究極にシンプルなキャラクターだから、それをさらに記号化するのはやめよう。そうじゃないと、『ドラえもん』じゃなくなっていく。作画のチェックをする時に、その点にはいつも目を配っています。
大杉 『ドラえもん』のキャラクターは、手足が短いでしょう。その分関節が少なく見えるんだよね。一歩間違えるとロボットみたいに固いポーズになっちゃう。
八鍬 F先生のまんがのすごいところは、そこですよね。シンプルで単純なのに、どのキャラクターもいきいきしている。
八鍬 たとえば、ドラえもんが大あわてで走っているシーンは、これ以上傾けないくらいの前傾姿勢で描かれています。一方で、のび太がじたばた走っている姿は、やや後傾で描かれている。
大杉 そこには、先生がいろんな作品の中で培ってきた技術が詰まっているんだろうね。『ドラえもん』のキャラクターは、造形としてすでに記号化されているからこそ、リアルな芝居から落とし込んで描かないといけないんです。
八鍬 のび太が走っているシーン1枚の中にも、あせっている、こまっているなど、情報がたくさんつまっていますからね。それを読み取って、アニメに落とし込まないと、いきいきしたキャラクターは描けません。
大杉 ドラえもんとのび太の関係についても、観る人それぞれに思いがある。お母さん的な、保護者的な、立場だろうっていう人もいるし、対等な友だちだろうっていう人もいる。もちろん、おはなしによって関係性は変わってくるとは思うんだけど。
八鍬 たまにドラえもんが部屋でラーメンを食べていたりするでしょう。あれ!?ドラえもん、本来の目的をわすれているな!っていう瞬間がある。ドラえもんは、それでいいと思うんです。
大杉 そうなんだよね。どっちかに偏り過ぎちゃいけない。友だちでもあり保護者でもある。
八鍬 そして「森は生きている」(2017年8月25日放送予定)のおはなしのように、のび太が危機的な状況にはきちんと子守りロボットとしての役目をはたす。
大杉 完璧になってしまうと、ドラえもんじゃなくなっちゃう。日頃は友だちや兄弟みたいな気持ちで、油断しているけれど、いざというときに本来の目的を思い出して行動する。
八鍬 その絶妙なバランスも、『ドラえもん』のおもしろさの秘密なんですね。
第4回は、8月18日(金)AM10:00ごろ公開予定です。
※「ロビンソンクルーソーセット」のおはなしは、「ドラえもん サマースペシャル」と、てんとう虫コミックス『ドラえもん』39巻に収録されています。
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