「皆さんの想像力をお貸しください」

絵コンテをご覧になった辻村さんの感想は?

八鍬さんは、全体を5つのパートに分けて絵コンテを描いてらっしゃったんですね。それが順番に届くのが楽しみでした。私は絵コンテを参考にしながら小説を書いていたんです。映画を見てから小説を読む人たちのために、できるだけセリフや世界観を映画に近づけようと心がけていたので。

脚本から絵コンテにするとき、僕の判断でアレンジさせてもらった場面もあるから、絵コンテが止まってしまうと、辻村さんの筆も止まってしまうわけですね。

とくにアクションシーンが続くクライマックスは、実際に絵を見ないと書けないんですよ。八鍬さんたちにお任せしようと、脚本にはメカやキャラクターの動きをそこまで詳細に書いていなかったので。だから「ここの動きがわかりづらい」って編集者に指摘されても、「そんなこと言われても私だって見たことないから!」って思っていました(笑)。

絵コンテは、エンディング以外は僕一人で描いていたので、どうしても時間がかかってしまうんです。

毎回、絵コンテの扉ページに、八鍬さんがスタッフへ宛てたメッセージを書かれていたのもすごくよかった。とくにいちばん最初のコンテに書いてあったメッセージにはグッときました。「映画を観てくれる子供たちに、大人の想像力を見せつけてやりましょう!」っていうの。

コンテに書かれていたメッセージ

この映画のテーマは「想像力の大切さ」です。それがきちんと伝わる映画にしないといけないな、という自分に向けてのメッセージでもあったんです。でも正直なところ、最初からそのテーマがあってお話を作ってきたわけじゃないですよね。だんだん隠れていたテーマに気がついていったというか。

そうそう。まだプロットを作っている段階で、八鍬さんから「今回のテーマって何ですか?」と聞かれたんですね。そのとき私は、テーマって必要かなあとぼんやり考えていたんです。八鍬さんに「想像力の大切さがテーマだと思うんです」と言われても、ああ、そうなるのか…くらいの気持ちでした。

どの辺りで、はっきりと自覚したんですか?

なぜルカは、出木杉くんではなく、のび太を頼ったのか。その理由はどこにあるんでしょうと、八鍬さんに問いかけられたときです。「そうか! のび太には想像力があるから、きっとエスパルの存在も受け入れてくれるとルカは考えたんだ。だからルカは、のび太を頼ったんだ」。そう気づいてから、想像力の大切さがはっきり実感できて、テーマにしようと私の中でもスイッチが入りました。

そもそも、異説クラブメンバーズバッジも想像力がないと使えない道具ですしね。

そう言えば、最後のパートの絵コンテに八鍬さんが書かれたメッセージも印象的でした。「自分の想像力は使い果たしました。映画を完成させるにはスタッフの皆さんの想像力が必要です。どうぞ力をお貸しください」。

映画は一人では作れませんから。絵コンテから先は、何百人というスタッフが何ヶ月もの時間をかけて仕上げてくれるんです。

それを今回、私が強く感じたのはアフレコ現場でした。アニメーターの皆さんが何ヶ月もかけて作り上げてきた絵に、声優さんや音響スタッフの皆さんが、ばつぐんのチームワークで命を吹き込んでいく。その仕事ぶりに感動しました。

子供の頃に「アニメばっかり見てないで勉強しなさい」って言われた経験は誰にでもあると思うんですね。けれど今回現実の制作現場を目の当たりにしたことで、アニメはこんなに多くの大人たちが本気で作っていたんだとあらためて知ることができたんです。そんなアニメを見て育ってこられたこと、そして今回そんな〝本気の大人〟の一人として映画に関われたことは、本当に幸せでした。

第4回は、3月22日(金)AM10:00頃公開予定です。

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