「この人ならいい脚本を書ける!」

まずは、お二人が今年の「映画ドラえもん」を手がけることになった時のお話からお聞かせください

最初に藤子プロさんから脚本の依頼があったのは、いまから6年くらい前のことなんです。そのときは「映画ドラえもん」の脚本を私が書くなんてあまりにも恐れ多く、お断りしました。その後も一生お引き受けするつもりはなかったんですが、2014年の春に八鍬さんが監督を務めた「新・のび太の大魔境」を観て、この監督と映画を作れるのだったら…と思えたんです。

「映画ドラえもん 新・のび太の大魔境〜ペコと5人の探検隊〜」(2014)

それは、うれしいですね。あのとき、僕の友人を通じて辻村さんに映画の感想を送っていただきましたよね。

そうそう。その前年、2013年の夏に講談社から『島はぼくらと』という小説を出したんです。私がドラえもん好きだと知った講談社の営業さんが、「実は僕の友人が、来年のドラえもんの映画を監督するんですよ」と。

その人物が僕の高校の同級生でした。

映画を観てから「ものすごく良かった」と、その営業さんに感想メールを送ったところ、彼が八鍬さんに転送してくださった。そしたら、今度は八鍬さんから『島はぼくらと』の感想メールが届いてびっくりしました。

実は友人が辻村さんのメールを転送してくれる前から、僕は辻村さんのことを知っていたんです。「ドラえもんのことが大好きな作家さんがいるんだよ」と、辻村さんのファンだった妻や、妻の母から聞いていましたから。

わあ、うれしい!

実際にどういうお話を書かれているんだろうと、『島はぼくらと』や、その後に発表された『ハケンアニメ!』『家族シアター』などの作品を読んだところ、最後に救いがあるところや、巧妙な構成とドラマティックな要素を両立しているところ、作品ごとに新しいことに挑戦しているところなど、「大長編ドラえもん」に通ずるところがたくさんあるなと感じていました。だから、今回の映画の脚本が辻村さんに決まったときは、「この人ならいい脚本を書ける、ぜひお願いします!」という思いでした。

ありがとうございます。私は、八鍬さんから届く本の感想メールを読んだり、「新・のび太の大魔境」の次に監督をされた2016年春の「新・のび太の日本誕生」を観たりするうちに、私たち二人は「藤子観」というか「ドラえもん観」がとても似ているのではないか、と思えたんです。まだ、お会いしたこともなかったのに(笑)。

「映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生」(2016)

初めてお会いしたのは、「新・のび太の日本誕生」の試写会でしたよね。辻村さんには、感情たっぷりにすごい勢いで映画の感想を伝えていただきました(笑)。今回の映画のシナリオ会議のときはもちろん、一緒にご飯を食べに行ったときも辻村さんはよくしゃべりますよね。いろんなことに詳しくて、作品だけでなく素のご本人もおもしろい人だなあと思っていました。

そんなふうに思われていたなんて……(笑)。こちらがバーーーッとしゃべっていることに対して、八鍬さんが引いてなければいいなと、私は思っていました。

「藤子観」といえば、辻村さんの作品にも藤子・F・不二雄先生に通じるものがあると思っているんです。僕は辻村さんのデビュー作『冷たい校舎の時は止まる』が好きなんですね。昨年、本屋大賞を受賞された『かがみの孤城』では、そうした初期の作品にあった感覚が戻ってきたようでうれしかったです。いずれの作品も日常とファンタジーを一致させているところなどは、まるでF先生のようだなと。

なんと光栄な! 私の小説はすべて、「映画ドラえもん」がお手本になっているところがあるんです。本当に多くのことをF先生から無意識に学ばせてもらってきたんだなと、今回の脚本を書いてみてもあらためて感じました。八鍬さんにも、それを感じ取ってもらえたのなら、すごくうれしい!

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