「それは人間を見つめてないと描けないこと
だと思うんですよね。」

『ドラえもん』の他には、どんなまんがを読まれていたんですか?

ギャグまんがは、すごく好きでしたね。でも、『ドラえもん』だけは別格で。

『ドラえもん』のなかで、好きなおはなしを教えてください。

そうだなあ……ベタだと思われてしまうかも知れないですけど、「台風のフー子」は好きでしたね。かわいいですよね、すごく。

台風の赤ちゃんを、のび太がいっしょうけんめい育てるおはなしですよね(笑)。

(てんとう虫コミックス ドラえもん6巻『台風のフー子』P143:右/P147:左)

そして、大きくなって、別れがある。バギーもそうですけど、人間じゃないものに、命を与えて、そのキャラクターが一番人間らしく感じる。F先生が描く作品、とくに『ドラえもん』に関しては、視点がやさしいなあって思う。
ジャイアンは歌が下手ですけど、でも、うまくなって賞賛されてよかったね、じゃなくて、下手なままなんだけど、歌が下手なことでみんなが救われる場面があったりする。

たとえば『のび太の魔界大冒険』に出てくる人魚のおはなしもそうですね。

(大長編ドラえもん5 『のび太の魔界大冒険』 P127)

そうそう。ジャイアンもスネ夫も、とくに大長編のまんがでは、いいヤツになりきれないところを描いている。でも、そのおかげでピンチから救われたりするのがすごくやさしいなあって思うんですよね。

(大長編ドラえもん6 『のび太の宇宙小戦争』 P148)

安易なやさしさじゃないっていうか。それは人間を見つめてないと描けないことだと思うんですよね。子ども心には、素直にワクワクしたり、ドキドキしたりしていたんですが、大人になって読み返すと、そういう深さがあることに気づきました。

(大長編ドラえもん6 『のび太の宇宙小戦争』 P156:上段/P157:下段)

みんな違うけどみんないいっていうのが、F先生のほかの作品にも共通するところですよね。

そうなんですよ。悪いやつもいるんだけど、そのどうしようもなさみたいなのもちゃんと描いているでしょう。そこにグッときちゃう。

すごいですよね。

ドラえもんだって、未来の世界では落ちこぼれっていうか、はみだしちゃったものじゃないですか。

そういうところがおもしろいんですよね。日常と非日常があっても、その日常を必ず大切にしているんです。

F先生の作品に流れているそのバランス感覚は、ほかにはあまり見当たらないように思います。だからこそ、どんな子どもが見ても、大人が見ても、その作品の世界の中へスッと入っていけるんじゃないでしょうか。

第3回「“どこでもドア”を使って、ドラマの撮影現場に行きたい」は、3月14日(水)AM10:00頃公開予定です。

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2000年にバンドSAKEROCKを結成。2010年に1stアルバム『ばかのうた』にてソロデビュー。2015年5月にリリースしたシングル『SUN』が、オリコンウィークリーシングルチャートにおいて自己最高となる2位、各配信チャートで軒並み1位を記録するなど大ヒットを記録。2016年10月5日にリリースしたシングル『恋』は社会現象とも呼べる大ヒットを記録。

俳優として映画『箱入り息子の恋』(13/市井昌秀監督)、『地獄でなぜ悪い』(13/園子温監督)等に出演し、第37回日本アカデミー賞新人俳優賞等の映画賞を多数受賞。ドラマ『コウノドリ』(15/TBS)、大河ドラマ『真田丸』(16/NHK)、『逃げるは恥だが役に立つ』(16/TBS)など出演作多数。作家としても『蘇える変態』『いのちの車窓から』などの著書がある。2017年3月には第9回伊丹十三賞を受賞した。